真言宗泉涌寺派大本山 法楽寺

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‡ 『遺教経』を読む(2)

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1.原文

戒是正順解脱之本。故名波羅提木叉。依因此戒得生諸禅定及滅苦智慧。是故比丘。當持淨戒勿令毀犯。若人能持淨戒是則能有善法。若無淨戒諸善功徳皆不得生是以當知。戒為第一安隱功徳之所住處

汝等比丘。已能住戒當制五根。勿令放逸入於五欲。譬如牧牛之人執杖視之。不令縱逸犯人苗稼。若縱五根。非唯五欲将無崖畔不可制也。亦如悪馬不以轡制。将當牽人墜於坑陷。如被劫害苦止一世。五根賊禍殃及累世。為害甚重。不可不慎。

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2.読み下し

戒は是れ正順解脱の本なり。故に波羅提木叉と名づく。此の戒に依因せば、諸の禅定及び滅苦の智慧を生ずることを得。是の故に比丘、当に浄戒を持ちて毀犯せしめること勿るべし。若し人、能く浄戒を持てば、是れ則ち能く善法有り。若し浄戒無ければ諸善の功徳皆生じることを得ず。是れを以て当に知るべし。戒は第一安穏功徳の所住処たるを。

汝等比丘、已に能く戒に住す。当に五根を制して、放逸に五欲に入らしむること勿れ。譬えば放牛の人、杖を執って之を視て、縦逸に人の苗稼を犯さしめざるが如し。若し五根を縦にせば、唯五欲の将に崖畔無くして制すべからざるのみにあらず。亦、悪馬の轡を以て制せざれば、将に当に人を牽して坑陷に墜とさんとするが如し。劫害を被る如きは苦一世に止まる。五根の賊は禍殃累世に及ぶ。害たること甚だ重し。慎まずんばあるべからず。

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3.現代語訳

戒[かい]*1(を守ること)は、(苦しみの海たるこの世界から)解脱[げだつ]*2する根本である。ゆえに波羅提木叉[はらだいもくしゃ]と名づけたのである。この戒に従って生活すれば、様々な禅定の境地および苦しみを滅し去る智慧を獲得することが出来る。このようなことから僧侶たるものは、浄戒を保ってこれを犯すようなことがあってはならない。もし僧侶が、しっかりと浄戒をたもつのであれば、この人には善法がある。しかしもし、浄戒をたもつことがないならば、様々な善き功徳が得られることはないだろう。これによって知るべきである。戒(を保つこと)こそが、(涅槃という)最上の平安を得る功徳の生じる元であることを」

「汝等僧侶は、すでにしっかりと具足戒を受け保っている。五根[ごこん]*3を制御し、自分の思うがままに(色や音や香りや味、触り心地などの)五欲[ごよく]*4に溺れることがないようにしなければならない。譬えば牛を放牧する者が、杖を持って牛を見張り、牛が勝手気ままに他人の農作物を食べてしまわないように見張るようなものである。もし五根を(自ら制御せず)ほしいままにしたならば、五欲(に対する執着)が際限の無いものとなるばかりではない。それはまるで、人が暴れ馬に乗るときに、くつわを噛ませてそれを制御しなければ、その馬はその人を穴に転落させようとするようなものである。劫害[こうがい]*5を被っておこった苦しみは、この一生涯を超えて受け続けるものではない。しかし、五根を放逸にした結果として起こる災い・苦しみは、幾世にもわたって受け続けることになるのである。その悪しきことは、大変に重大なものだ。よってよくよく慎まねばならない」

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4.語注

*1 戒(かい)…行為の善悪正否の根本的基準となるもの。道徳。他者によって強制されるものではなく、自身の意志によって実行されるもの。「戒」という言葉自体は、「(良い)習慣」を原意とする、サンスクリットあるいはパーリ語「sīla(シーラ)」の漢訳語。経典の中で、時としてこれを音写した「尸羅(しら)」という言葉を使用することがある。→本文に戻る

*2 解脱(げだつ)…。→本文に戻る

*3 五根(ごこん)…人の五つの感覚器官。眼・耳・鼻・舌・身(体)。→本文に戻る

*4 五欲(ごよく)…五根それぞれの対象に対する欲望。眼は色(もの)、耳は声(おと)、鼻は香(におい)、舌は味(あじ)、身は触(はだざわり)。それらに対する愛着、渇望または嫌悪を言う。→本文に戻る

*5 劫害(こうがい)…人生における様々な災い。風水で凶とされる「劫」を訳語として用いたか?。→本文に戻る

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